Japan Society for Pharmaceutical Education

設立趣意書

平成16年に薬剤師養成のための薬学教育を6年に年限延長することが決まって以来、薬学教育関係者は新しい教育制度の構築に取り組んできました。平成21年度から薬学共用試験、平成22年度からは実務実習、そして平成25年度からは薬学教育第三者評価を開始し、国会の附帯決議内容に対して薬学教育関係者が協力して対応してきました。平成24年3月には6年制教育課程を修了した一期生が卒業し、新たな薬学教育制度を構築することができました。さらに、平成25年度には6年制薬学教育課程カリキュラム構築の指針となる薬学教育モデル・コアカリキュラムの改訂が文部科学省主導で行われました。このような10年間にわたる薬学教育の改善・充実に向けた取り組みの成果は、一部が学会発表や論文としてまとめられていますが、検証の取り組みや報告は決して十分とはいえず、これらに対する評価も確立していません。

薬学教育体制の構築とその成果に関する検討は主に薬学関連団体で行われ、教育改革の検証も主として文部科学省の委託事業等で実施され、その結果は報告書で公表されてきました。また、個々の大学や実務実習施設における取り組みとその成果も、複数の学術集会や学術雑誌、商業誌などに分散して発表されているのが現状です。一方、他の医療人教育分野では、日本医学教育学会(1969年設立)を筆頭に、日本歯科医学教育学会(1982年設立)、日本看護学教育学会(1991年設立)、日本看護教育学学会(1991年設立)、日本保健医療福祉連携教育学会(2008年設立)など、分野ごとに教育学会が設立され、教育に関する研究の充実・発展を目的とした学術活動が行われています。

薬学教育の分野では、平成27年度から薬学教育モデル・コアカリキュラム(平成25年度改訂版)に準拠した新カリキュラムが各大学で導入され、一方4年制教育課程に対しては参照基準の検討が行われます。また、薬学教育の対象は、学部の学士課程だけでなく、大学院の修士課程・博士課程、そして課程修了後の医療、教育、研究機関や企業などでの生涯にわたる研修・研鑽にまで及びます。これら広範囲に及ぶ薬学教育全般について、教育プログラムの改善・充実に向けた科学的アプローチを推進し、その有効性に関して科学的な検証・評価を実践していくためには、薬学教育を対象とした研究の充実・発展が必要です。薬学教育における科学的なアプローチを推進するためには、「教育学」に関する最新の知見や取り組みについて情報を共有する機会や媒体も必要となります。このような学術活動を行うために「日本薬学教育学会」を設立することは、薬学教育を対象とした研究活動を活性化し、サイエンスとしての「薬学教育学」を確立するために必要かつ時宜を得たものです。近年、各大学には教育研究センターなどが設置され、教育を主たる業務とする教員からも教育学会設立に対する要望の声があがっています。「日本薬学教育学会」の設立は、薬学における教育学の活性化に留まらず、国内外の医療人教育に関する学術団体との連携にも有用です。

「日本薬学教育学会」は、学術集会の開催、会誌等の刊行、国内外の関連団体との交流及び協力などの事業を通して、薬学教育に携わる会員の情報発信・共有の場を提供し、サイエンスとしての「薬学教育学」の確立、薬学教育に関する研究の発展・充実、そして薬学教育のさらなる向上を目指します。大学教職員をはじめ、薬剤師、学生(学部、大学院)、病院・薬局・企業の教育研修担当者など、広く薬学の教育に携わる関係者が本学会に参集し、薬学教育に関する学術活動を展開していくことを期待します。

 

平成27年8月3日

全国薬科大学長・薬学部長会議

「日本薬学教育学会」設立準備連絡会議